柴田訳『ナイン・ストーリーズ』:Jerome David Salinger [本]
書店に立ち寄って新刊の棚を眺めていたら柴田元幸さん訳の『ナイン・ストーリーズ』の文庫版が並んでいました。
野崎さんの訳は何度も読みました。
柴田さんの訳はヴィレッジブックスの『モンキービジネス』に掲載されたのが初出です。
映画『フィールド・オブ・ドリームス』に登場する作家は元々サリンジャーだったそうですが、承諾が得られなかったとのことです。
野崎さんは同じサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の訳が有名です。
柴田訳
これは単なる短編集ではないのです。
元々短編集の体裁で刊行されたものではなくて『ザ・ニューヨーカー』などに掲載されたものを集めたものですが、今やこの九つの物語の一つでも欠けるとか新たに一編を加えるなどは考えられないのです。
野崎訳
柴田訳
柴田訳
野崎訳
『大工よ〜』や『ハプワース〜』は取っ付きにくい印象です。
野崎訳
野崎訳
柴田訳
柴田訳
各短編のタイトルの訳し方の違いだけ見ても興味深いのですが、 Wikipedia にはこれまで訳されたものの詳細が載っています。
これは野崎版ですね。
・『J.D.サリンジャー作品集』(繁尾久・武田勝彦共訳、文建書房、1964年)- 新版・グーテンベルク21(電子出版)、2022年
別版『サリンジャー選集(4) 九つの物語 大工達よ、屋根の梁を高く上げよ』 (荒地出版社、1968年、新版1990年ほか)-「大工~」は滝沢寿三訳
・バナナフィッシュに最良の日 / コネチカットのウィグリおじさん / エスキモーと戦う前に / 笑っている男 / 小舟にて / エズメのために――愛と汚れ / 美しき口もと、ひとみはみどり / ド・ドミエ・スミスの青の時代 / テディ
・『バナナ魚日和』(沼沢洽治訳、講談社、1973年 / 『九つの物語』、講談社文庫、1980年)
バナナ魚日和 / コネティカットのひょこひょこウサギ / 対エスキモー戦開戦前夜 / 笑い男 / 小舟での出来事 / エズメに――愛と汚れをこめて / 我が人の口愛らしく目は緑 / ド・ドミエ=スミスの青の時代 / テディー
・『ナイン・ストーリーズ』(野崎孝訳、新潮文庫、1974年、改版1992年)
バナナフィッシュにうってつけの日 / コネティカットのひょこひょこおじさん / 対エスキモー戦争の前夜 / 笑い男 / 小舟のほとりで / エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに / 愛らしき口もと目は緑 / ド・ドーミエ=スミスの青の時代 / テディ
・『九つの物語』(中川敏訳、集英社文庫、1977年、改版2007年)
バナナフィッシュに最適の日 / コネチカットのよろめき叔父さん / 対エスキモー戦まぢか / 笑い男 / 小舟のところで / エズメのために――愛と惨めさをこめて / 愛らしき口もと目はみどり / ド・ドーミエ=スミスの青の時代 / テディー
・『九つの物語』(鈴木武樹訳、角川文庫、1971年 / 東京白河書院「サリンジャー作品集3」、1981年)
バナナ魚にはもってこいの日 / コネチカットのグラグラカカ父さん / エスキモーとの戦争の直前に / 笑い男 / 下のヨットのところで / エズメのために――愛と背徳をこめて / 美しき口に、緑なりわが目は / ド・ドミエ=スミスの青の時代 / テディ
・『ナイン・ストーリーズ』(柴田元幸訳、ヴィレッジブックス[3]、2009年、文庫版・2012年/河出文庫、2024年1月)
バナナフィッシュ日和 / コネチカットのアンクル・ウィギリー / エスキモーとの戦争前夜 / 笑い男 / ディンギーで / エズメに――愛と悲惨をこめて / 可憐なる口もと 緑なる君が瞳 / ド・ドーミエ=スミスの青の時代 / テディ
(Wikipedia)
・A Perfect Day for Bananafish
・Uncle Wiggily in Connecticut
・Just Before the War with the Eskimos
・The Laughing Man
・Down at the Dinghy
・For Esmé—with Love and Squalor
・Pretty Mouth and Green My Eyes
・De Daumier-Smith's Blue Period
・Teddy
A Perfect Day の訳し方一つをとっても違いますね。
私としては野崎訳の「うってつけ」に痺れてしまっているのでこれ以外ないという感じですが、「日和」も悪くはないですね。
鈴木訳の「もってこい」もなるほどとは思います。
昔のキャッチコピーで「ゆっくり走ろう北海道」とか「でっかいどお。北海道」というのがありましたが、あれはリズムがいいんですよね。
ゆっくり と ほっかい
でっかい と ほっかい
が揃っているのがいいんです。
「ゆっくり走ろう北海道」が受けると「ゆっくり走ろう〇〇」というのがいくつも登場しましたが、「北海道」だから良かったのです。
perfect は最良(繁尾・武田訳)、最適(中川訳)もいいのですが Bananafish を「バナナ魚」でなく「バナナフィッシュ」として「うってつけ」とするとリズムが近くて心地良いんです。
言葉はリズムも大切なんです。
サリンジャーの娘が本を書いていますが、読んでいません。
このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年 (新潮モダン・クラシックス)
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/06/29
- メディア: 単行本
この本は買いましたが、訳文もかなり苦労しているようでしたが読みづらく、途中で挫折しました。
タイトルの訳ももっと何かありそうに思います。
This Sandwich Has No Mayonnaise
ハムサンドイッチよりはハムサンド。
たまごサンドイッチよりはたまごサンド。
若者はマヨネーズとも言わずマヨらしいです。
マヨねえぜ、このサンド。
新潮文庫は昔のアンカット本の名残があります。
昔講談社文庫が出た時、紙の質が良くて小口も天地も切り揃えてあるのが新鮮でした。
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